〜宛メメント ミユウ 「何?」 あたしも同じく睨み据える。 ミユウはそんなあたしにはお構いなしに話を進めた。 「良いバイトが有るの。 簡単にお金、稼げるトコあるんだ。 一緒行こうよ」 ミユウはオレンジブラウンの長い髪を弄びながら、気だるげに言う。 そんな素振りに多少苛立って、あたしは拭き掛けのグラスをまた磨き出した。 ミユウを見てると、苛々して来る。 「それが、2人の方が効率いいのよ」 「何であたしなの?他に女の子、いるじゃない」 「あたしとあんたが似てるからよ。」 一瞬、はっとして、ミユウの方を見やると、ミユウは強い目であたしを睨むかのように見据えて居た。 その、見下したような目付き。 大嫌い。 似てる? 馬鹿な事、言わないで。 あたしは、ミユウの事を以前から知って居た。 ミユウはあたしの事など忘れてしまったのだろうか? 「あ、お客が来たわよ。」 そう言って、さっさと厨房の方に引っ込むミユウは、またサボるつもりなのだ。 ミユウは、店員の他の女の子からも評判が悪いのだが、男からは何故か好かれている。 魔性の女…というフレーズはこの女の為にあるのかと、納得する程の変貌ぶりを目の当たりにすると、 些か気付かれと眩暈で卒倒しそうになる。 まあ、かく言うあたしも、女よりは男の方が手馴れては居るけれど、 仕事を不真面目にやったりはしない。 この店の良い所、それは、カクテルとビリヤード台だけ。 あたしはその為に働いて居る。 [←][→] [戻る] |