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〜宛メメント
感情
「早くやっちゃおうよ。
あたし今夜は気分悪いから早く帰りたいの。」

気だるげにそう切り出し、部屋の明かりを間接照明に切り替える。
そのテキパキとした動きに関心でも抱いたのか、
ハゲは待ってましたとばかりにあたしの胸を揉み扱く。
乱暴な痛みが優先してあたしを包み、
あたしは人形のように身体を不動させ
目線は天井に逸らして、
出来るだけハゲを見ないように心がけた。

気のない男とヤル時はこうするのが一番だって、
本能で解かっているのだ。
しかし何故か、遮断した前頭葉の奥底から沸き立つものがあるのに気付く。

それは、ハゲのことでも、金のことでもない。


誰でもない、クレドだった。


見開いた眼にはもはや殺風景な天井など映ってはいない。
クレドの無愛想な笑顔が網膜に焼き付き離れないのだ。


……クレドは絶対に、
こんなこと、
しないのに。


シャットアウトした筈の感情が、一部漏れ始める。
それは心の中に秘めたクレドへの想いなの?

それとも、罪悪感?


あたしは今、中年の親父に抱かれているんだろうけど、
奥深くへ侵入して来る生臭い生殖器も、男の欲望も、
何より、このあたしの身体の汚さよりは何倍も優れているんだ。

数知れない男を、
感情を持たないこの器で受け止めた振りをして
浴びる程の精液を身体に付着させているあたしを…


ねぇ、クレド。

それでも君は、
あたしを嫌わない?
厭がらない?

それでもあたしを、
君は「綺麗」と
言ってくれるだろうか…?


君だけが、
「チョビコ」を保つ術だよ……



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