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クリスティノーラ
綺麗―エンジェル―
頭が割れるように痛かった。
それだけは確かに覚えている。


背中に生えた鳥のような羽毛繊維から
光のオーラが燦燦と行き渡る中
碧眼の美少年はなおも考える。


真っ白い空間にただ独り、
歩み寄る者も皆無だ。
忘却にも似た孤独がことさら彼を自由の淵に立たせていた。


首には銀のロザリオ。
それにも関わらず
皮のチョーカーから垂れ下がっているのは逆十字であった。


くしゃくしゃになった銀髪を手で掻き上げ、
ジーパンのポケットをまさぐる。
煙草とZIPPOはちゃんとそこに入っていた。


ニコチンを大量に含んだ筈の口内で
器官が全て死滅しているかのような錯覚に陥る。
味が無い…
それでも肺は幾分か楽になった。


ここがどこで
俺はどーしてここにいるの?
ここがどこで
俺は何すりゃいいの?


いつの間にか口ずさんだ言葉は
彼には到底理解出来ない言葉の暗号のようだった。


Christus factus est
pro nobis obediens
usque ad mortem autem crucis…


Propter quod et Deus
exalcitavit illum
et dedit illi nomen
quod est super omne nomen…


まるで聖書を読み上げるその声は
空虚な空にこだましていた。


「彼は我らの為に服従するものとなられた
しかも十字架の死に至るまでも…
それ故神は彼を高くあげられた
そして彼に全ての名に勝る名を与えられた…」


美しい堕天使の風貌で
煙草を口に含む彼の手にはロザリオが輝いて居た。


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