メタルハート
屋根
「悪趣味だな…
俺が…意地を?馬鹿な…」
嵐がようやく発した言葉は途切れそうな程、小さな声だった。
右肩から流れる大量の血。
それを左手で押さえながら、嵐は力無くその場にかがみ込んだ。
「…解ってないわね。
あの女の事忘れたら…って言ってるのよ」
そう告げた女は、高笑いにも似た奇声めいた叫びで嵐を罵る。
…二人は、知り合い?"あの女"?
少なくとも、女の方は嵐の過去を知っているようだが…
「ちょぉぉぉっと!!あんたッ!!いい加減にしなよっ!!
嵐が一人でやるって言うから黙ってやったケド!!」
もう手加減しないんだから…等と喚き散らす維星が、嵐の側まで駆け寄り攻撃体制をとる。
維星の武器…手の甲にはめた三本の鈎爪が鋭く光った。
「あらあら。威勢のいい子猫ちゃんね。
嵐、まさかこの子も…なのかしら?」
クスクスと含み笑いで相変わらず罵る女は、更に嵐の傷を抉った。
傷口よりも、深く苦しい秘めた傷を――
「…お前、それ以上あいつを汚すな…」
そう呟く嵐の声は小さく、だが確かにはっきりと聴こえた。
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