メタルハート
屋根
「…なんか嵐、ヘン。
いつもの嵐じゃないみたいだよ…」
二人の凄まじい光景を遠目に見ながら、維星は小さく呟いた。
ぼーっと立ち尽くした侭、手にはあの端末を握り締めている。
りゅあを抱えた葉月でさえも、嵐の不自然さには目を見はった。
「何か…焦っているのかしら…」
眼孔鋭く、肩の力が抜けていない。
あれじゃあ…満足に力を出し切れないわ…
葉月の木心流格闘技は型が命。
幼い頃から先代に嫌と言う程教え込まれた。
誤った体勢では氣の流れを悪くし力が出し切れない上に、受けるダメージも倍になるのだ。
と、その瞬間。
「…くっ!!」
女の得意とする突きの一撃が、嵐の肩を貫いた!
「あッ 嵐っ…!!!!」
維星の叫びも虚しく、ニヤリと口元を綻ばせた女は、嫌に上目使いで嵐に微笑む。
「嵐…あんたは私の獲物よ。
つまらない意地なんて、捨てる事ね…」
「なッ に…!?」
ぐちゃり。
「ぅ"ぁッっ…!!!!」
生々しい音が辺りに響く。
患部を貫いた細剣は、一気に嵐の肩から引き抜かれ、真っ赤な弧を描いて夜空に舞う…
女はその剣を小脇に掲げ、ねっとりと付着した嵐の血を舌で掬い取った。
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