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メタルハート
エデン
「え…?」

思わず聞き返してしまった。
一瞬で、恥ずかしさや戸惑いが吹っ飛んだ。
紫流の腕の圧力がさっきのものより強いから、どこからともなく不安が押し寄せる。

『人間は本来、持ち得る属性は一つの筈なのだ…りゅあ』

いつもに増して低い声の紫流。
その声はどこか悲しげで…

私の中に眠る属性…

マリンブルーの刀身。
青眼青髪の容姿端麗。
その優美を持つ紫流は、確かに"水"の攻撃を得意とする。

紫流が水属性と言うのも頷ける。
カタ平原で見せた『青雷』も、雷の攻撃ではあるが水との融合技。

紫流に言われるまでは気付かなかったが、私自身も"水"と深い繋がりがあるように思える。

「…ねぇ、紫流
私の中に眠る、もう一つの属性って…何?」

小さな声で言った。
紫流の体が少しだけ、震えたのは気のせいだろうか…

『…それは俺にもまだ解らない。
…だが…』

紫流は言葉を切ると、巧みに次の言葉を探すかのように、
きつく抱き締めた腕に力を込めた。

きつく、きつく。

それでも私は、この腕に抱かれると落ち着くのだ。

『…俺のりゅあ
お前の中のもう一つの属性が覚醒された時、お前は危険に見回れるだろう…』

紫流のやっとの思い。
彼なりに考えてくれた言い方だったのだろうが、実際りゅあに与えたのは不安だった。

危険…って?
頭の中はそれを反芻している。
自分にも解らない未知の力が、私を危険に晒すっていうの?

「…そんな…」

堅く目を瞑った瞳からは、今にも涙が零れそうだ。

朝霞の件以来、この問題に首を突っ込んでいいのかと戸惑った。
それに合わせるようにしてまた不安が募る。

紫流はそんなりゅあの心情を察して、また強く抱き締める。

『…だが俺は、お前を護る為、お前の武器となった。

…俺のりゅあ
お前は俺が護る。』

「…紫流」

耳元で囁かれた紫流の言葉は、小さいけれど強かった。

一気に涙が溢れ出す。

『だから強くなれ。俺を最大限に使いこなせる剣士になれ…』

目元から流れ落ちる涙を指で掬いながら、紫流は微笑む。

その笑顔は何よりも、りゅあの心の中で糧となった。


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