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メタルハート
アンタレス
影の眉がピクリと動き眉間に皺がよる。
が、銀の言う事にいちいち腹を立てるのも面倒臭く感じた。
彼はいつもあの調子なのだから。

「ところで維星は?
怪我したと聞いたが。」

はぁっと溜め息を吐いてから、サラリと話をかわした。
アンタレス唯一の女―維星<イホ>。
銀は顔を赤らめて、頭を掻く。

「あ あいつなら部屋で寝てんだろ…
怪我も大した事なくて良かったよ」

柄にもなく安堵の息を吐く銀に、影はくくくと皮肉な笑いを漏らした。

「おい銀。
本当に維星は部屋にいるのか?
見てきた方がいいぞ」

あからさまに笑う影に苛立つ銀はくってかかった。
影の襟首を掴む。

「どういう意味だ!?」

「…俺は影使いだ。
アジトに居る者の氣位、把握出来る。」

銀は一瞬の戸惑いを見せた後、弱々しい声を出した。

「でもあの部屋には鍵が…」

「兎に角見てくればいい」

影の指摘に従う。
この部屋の扉はバーへと続くシャッター式のあの扉しか見当たらない。
が、銀は急いでテーブルの下の隠し扉を開き、中に消えていった。

そして暫くした後、突如、影は口を開いた。

「呆れたな…あの過保護ぶり。
維星も少しは反抗したらどうだ?」

この部屋には確かに影一人しかいないのだが…
その瞬間、ソファーの背もたれで隠れた壁側がカタッと開き、女の子が出て来た。

「だって〜
銀に逆らったらボク何されるか…」

隠し扉から出て来た維星は、け伸びをしながら答える。
茶髪で外側にはねた癖っ毛のショートカットに緑の眼。
女だが、自分の事をボクと呼ぶのが癖らしい。

「怪我はいいのか?」

「うん、もう治った…ってあれ?
この写真のコ達って次の目標?」

心配する影だったが本人は元気が有り余っているようで
先程の写真を見るなり目を輝かせた。

「さあな…」

「余り悪い事してる風には見えないけど〜…
よしっ!ボクが遊んだげよっ」

そう言うなりひらひらと手を振って外へ向かう維星。
振り向き様、シャッターの扉から顔を覗かせ手でピースを作る。

「いつもありがとね〜影!」

精一杯の笑顔で脱出のお礼をするが、影は「ふん」と言っただけだった。


そしてこの街の夜は更ける―――

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