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メタルハート
アンタレス
「やっと来たか…影」

部屋に入るなり、目の前のソファーに深々と居座る赤髪の男に罵られる。
そう広くもないこの部屋には、裸電球に照らされたテーブルとソファーしかない。
…それも結構ボロい。

「ふん
こっちはつまらない任務して来たんだ。
更に気分悪くさせるな。」

影<カゲ>と呼ばれた黒コートの男は、徐にフードを外すと悪態を吐いた。

「お前な…
俺はこれでもリーダーだぜ?
ま慣れてるけど」

影はその言葉を無視する代わりに、自分もソファーに腰を下ろした。
座り心地は悪いが、疲れた体を休ませるには十分だ。

「それより銀。
何故あの小娘を追うのが俺の任務なんだ?
嵐でも迅でもいいだろうが。」

赤髪の男―銀<ギン>は、腕組みをしながらしかめっ面を見せた。

「そう言うと思った。その後は嵐に一任している。」

「ふん。俺にはあの小娘を追った所でアンタレスの得になるのか不明だが?」

的確な影の言葉に、銀は喉を詰まらせる。
影の言う事も一理あるからだ。
それに耐えかねて、銀は話を元に戻した。

「取りあえず影。
報告は?」

影はコートの懐から何枚かの紙切れを出しながら話し始めた。

「この三人だ。
この二人は剣技、格闘技を使えるみたいだが…
こっちは行商人だ。戦闘が出来ない訳ではないが…
兎に角皆、弱い。」

「ハッキリ言うね〜」

銀は手元に置かれた写真を見ながらからかった。
影はいつも辛口だからしょうがないとでも言うように。

「で、例の亜人については?」

「おそらく感づいていない。」

影は淡々と話しながら愛用の煙草に火を付けた。
ふーと煙を吐きながら足を組み替える。適度に伸ばされた前髪から、少しだけ垂れた目が覗く。

「…そうか。
まぁ後は嵐が何とかすんだろ。
ごくろーさん」

前髪だけ伸ばした赤い髪を掻き上げながら、銀は素っ気なく言う。
そして自分もつられて煙草に火を付けた。

「ところでお前…
気付いてないのか?」

「…何がだ?」

銀の見開いた目が影を捉える。
が影はいつものように余裕の表情だ。

「いや…
その何だ、その内な」

言葉を濁した銀は、明後日の方向に目が泳いで必死にそらす。

「あ?

喧嘩売っているのなら残さず買うが?」

「何でもねーよ。
とにかくごくろーさん!」

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