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メタルハート
葉月邸
リビングは洋風の家具や装飾でまとめられた、いかにも紅茶好きな葉月が好きそうな部屋だった。
玄関から廊下はあんなに純和風なのに、統一感に欠けるのは先代と葉月の価値観の違いなのだろう。
とりあえず黄緑色のふかふかソファーに腰掛けて、朝霞が運んで来てくれたタオルと救急セットでりゅあの処置をした。

「しみる〜ι」

葉月は、熱い濡れタオルでりゅあの傷口をふき、消毒液と軟膏を塗って包帯を巻く。

慣れた手つき。

「葉月様、紅茶お待たせしました!!
ローズティーです」

一通りの処置を済ませ、深々とソファーに座っていた二人は、道中の疲れのせいもあって一気にローズティーを飲み干した。

「…朝霞、まずそこに座りなさい。」

葉月が促すと、ソファーの隣の小さな丸椅子に朝霞が無言で腰掛けた。
朝霞の表情が強張っている。
何を言われるか内心ドキドキなのだろう。
りゅあは怪我のせいもあって、そのやり取りを静かに見守っていた。

「…で、あんた、この間私に内緒でメダに行ったりしてないでしょうね?」

本題に入る葉月は、確信に迫る誘導尋問をする。
ハッとした朝霞の表情からすると答えは一つ…

「怒らないから、正直に言いなさいよ?」

なんて朝霞に言う葉月だが、既に怖いので説得力に欠ける。
冷や汗を流しながら朝霞は、ようやく口を割った。

「実は…
三日前に、メダでダンスのイベントがありまして…
踊って来ました。楽しかったですぅ」

…ダンス?
ぽかんと口を開けたままのりゅあに葉月が付け足す。

「朝霞、ダンス好きなのよ…」

「はい☆朝霞は将来、踊り猫としてデビューしたいのです☆」

きらりんっと眩しい朝霞の笑顔。
…踊り猫ってι
踊り子って言いたいのかな…?

「あんた、メダで何か変な事なかった?」

ダンスの話を軽く流して、話を本題に戻す葉月。
朝霞は腕組みをしながら記憶を辿るように思い出した。

「あの日は…
メダの中心街の噴水広場に特設ステージが設けられてて、そこでダンスしたんですぅ。
朝霞も踊って疲れちゃって、ウェイターの人にお酒貰いました。
それから酔っ払ってきたからお家に帰ろうとして…」

そこで朝霞は口どもる。

「それで…?」

「忘れちゃった!?
みたいですぅ」

うーんと声を出して考えるものの、本当に思い出せない様子だ。

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