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メタルハート
葉月邸
「!!…っ朝霞!!」

葉月邸の玄関先で大声を出す葉月。
葉月の長身で中の様子を伺えないりゅあは、無理矢理顔を突っ込んだ。

「あっ…どうして…!?」

…そこには変わり果てた姿のこの家のメイド、半猫人の朝霞がいた。
廊下に座った彼女の眼は、猫そのもののように丸く光る。
犬歯は鋭く尖り、二股の尾はいつもより長く毛羽立っている…。

「朝霞って…こんな怖くないよね?
これじゃまるで猫みたいだよ…」

先程から固まったままの葉月に対して、りゅあは必死で投げかけた。

「ち…ち…
にんげんのち…」

朝霞がブツブツと口走る。
よく見れば、その見開かれた眼光は一点に集中して動かない。
瞬き一つせずに。

「にく…にく…
にんげんの…にく…」

「…朝霞?」

ぼそぼそと妖しくしゃべる朝霞をなだめようと、りゅあが一歩歩み寄ったその時。

「きゃっ…」

朝霞がりゅあに向かって攻撃を仕掛けて来た。
りゅあの胸、足…鋭い爪で引き裂かれた痕からは、紅い血が流れる。
あまりにも一瞬で、あまりにも大きなダメージに、りゅあはへなへなとその場に座り込んだ。

出血する傷口を手で庇いながら、りゅあは上を見上げる。
朝霞の鋭い眼孔。
ニヤリと笑った唇。

「ち…にく…
にんげんの…」

その言動の意味はまるで解らないが、ヤバい状況下だ。
気を紛らわす事が出来るか…

「…あ さか…
何でこんな事…」

試しに問いかけてはみたが、それは逆効果だった。
朝霞の体の周りに黒いオーラが揺らぐ。
低姿勢で手を構えた格好は攻撃体制だ――

その時。

「破足刀ッ!!」

りゅあの前に、葉月の長身が翻った。
高速で繰り出された回し蹴りは、朝霞の脇腹に的確にヒットする!
呻きながらそのまま壁にぶち当たった朝霞は、それ以上動く気配を見せない。

が、更に葉月は朝霞に近寄り、彼女の頬をべしんべしん叩いた。

「…全くこぉのバカ猫っ!!
心配かけて人騒がせなのよッ!!
正気に戻りなさいよっ」

べちんべちん…

たかが往復ビンタなのだが音速並だ。手のひら見えない…
朝霞の頬が膨れ上がったのではと心配する頃、朝霞の黄色い目が開いた。

「にゃ〜…
葉月様、痛いですぅ!!
はにゃ?何故朝霞はビンタされてるの?」

目をぱちくりさせる朝霞は、先程までの朝霞とはまるで別人の、普段の朝霞だった。

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あきゅろす。
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