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メタルハート
マシムシの森
カタン村の繁華街を抜け大通りから右手にのびる細道に入ると、無数の木が生い茂るマシムシの森だ。

「なんか、お伽話に出てきそうな森だねぇ〜」

キラキラ目を輝かせて、雰囲気に浸るりゅあ。
それもその筈、ここはマシムシと呼ばれる白ケヤキに似た木ばかりなのだ。
神秘的で、朝方や深夜には霧が立ち込める。
その霧というのも、マシムシの木から光合成される際に発生する成分のせいで、薄ピンク色なのだ。
この霧自体には毒性はないものの、加工し液体化すると惚れ薬として利用される。

「朝方にはもっと神秘的なのよ、ここ」

「へぇ〜」

こう見えて葉月は割と乙女チックなのだ。
恋とかかなり燃えるタイプそう。

「そういえば愛奈さ。
亜人の事について何も言わなかったから亜人がオカシクなっちゃう噂、知らないみたいだったね?」

当初の目的、亜人の異変についてりゅあなりに考えていた。
カタ平原での愛奈のように突然襲われる人が大勢いたら大変だ。
でも…
愛奈は"どうして?"と思っても、"何故亜人が?"とは言わなかった。
という事はつまり…

「きっと亜人に襲われたのは初めてだったんだわ」

そう言った葉月は足早だった。
何だかんだで朝霞の事が心配なのだろう。
薄暗い森の中を葉月の後を追ってりゅあも進む。

「うん。
さっきみたいな事が前にもあったら、おかしいな〜って思うモンね」

顎に指を当て眉根を寄せたりゅあに
その通りと言わんばかり、葉月は首を縦に振った。

「…ま、朝霞に聞けば何かしら手がかりが掴めるわ。
あ、ここからうちの敷地内だから」

「え?ここ…って?」

りゅあが辺りを見回すと、マシムシの木が覆い茂る中に鉄製のゴシック門がある。
蔦が絡まって原型は掴めないがかなりの大きさだ。
その門から葉月邸側は道幅が広くなっていた。
物珍しくきょろきょろするりゅあに叱咤が飛ぶ。

「あんま見ないでよ。広すぎて掃除出来ないんだから」

…一体葉月はどんな暮らしをしてるんだろうと気になる。
が、怒られると怖いので言わないでおく。

正面玄関への長い道を5分程歩くとようやく扉が見えてきた。
ゴシック調だった門とは打って変わった、木製の趣ある玄関扉。

ガラガラガラ…と引き戸を開けた瞬間…!!

二人は凍り付いた。

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