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メタルハート
港街メダ
「もし、お嬢さん…」

声をかけられて振り返ると、そこには見知らぬ小柄な老人。
先端に赤い宝珠のついた湾曲した杖を持ち、腰もそれと同様に曲がっている。

「えと…私?」

りゅあは自分に指を差しながら、どうしたものかと狼狽えた。

「うむ。ちぃと話があるんじゃが…」

「何?どうしたの?」

老人の言葉は、ちゃっかり団子を買ってきたらしい葉月にかき消された。
手に持つその団子の姿形からして、名物おさかな団子だろう。

「えっと…この人が話あるって。」

「お二方、私について来てくれますかな?」

長い白髭をたゆわせた、見るからに怪しい容姿。
訝しげにまじまじと老人を見る葉月の視線にもものともせず、当の老人はすたすたと歩き出す。

「どうする?」

「…行ってみましょう。もしかしたら、何か収穫が得られるかも。」

これにはりゅあも賛成し、葉月が買った団子を一口かじりながら老人の後を追った。



「…あれは、」

その様子を露天の物陰から見る者がいた。

「見た事あるな…あの老人。」

程良く伸ばされた茶色い髪の下で、灰眼が輝く。

すると次の瞬間、大地を蹴って飛翔。
近隣の屋根の上に音もなく着地すると、男は腕組みをしながら暫く考え込む。
徐に懐から携帯端末を取り出し幾つかのボタンを押すと、スピーカーから小さな声が響いた。

『何かあった?嵐』

ノイズ混じりの声は、微かに聞き取れる。

「今メダにいる。でも予想外な人物に遭遇した。調べてくれ。」

そう言うと男は端末を反転させ、りゅあ達の方向へと向ける。
ピピピ…と言う電子音と共に、内蔵されたレンズが二人を捉えた後、前方を歩く老人をキャッチ。

『データ来た。…まさかとは思うけど、確かにこれは予想外。』

男は端末を元に戻し、会話を続ける。

「…だな。引き続き見張っているけどさ、彼にはバレるだろうな。」

『特攻前衛が弱気ですねぇ。』

端末から響く声が皮肉混じりに笑った。
つられて男も、微笑を浮かべる。

「雷が代わるか?」

『僕はパソコンの前で十分満足だよ。』

そう言う声を肯定して端末を切った。
任務はまだ続く。
男は屋根を蹴って目標の後を追った。

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あきゅろす。
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