メタルハート
酒場シリウス
―――…
昼時のシリウスは満席と言っていい程かなり混み合う。
永遠一人で切り盛りしているせいもあり、特に忙しい時間帯。
それは常連客は勿論の事、街から離れた所にあるので旅人が休憩がてらに立ち寄るからだ。
ところがこの日ばかりは珍しく違った。
晴れた夏の季節だと言うのに、席はまばらに埋まりいつもより忙しくはない。
無論、真っ昼間から酒を浴びる飲んだくれもちらほら見受けられるが、それでも今日は暇な方だ。
「はい、お待ちどうサマ!」
最後に入った客に注文されたパスタを配膳し終えると、永遠はカウンターに戻りグラスを磨く。
普段ならもっと賑やかな酒場だが、たまには静かな昼下がりも風情がある。
こうしてグラスを磨いていると、ダンディーなマスターぽく見えるかも知れない…
ニヤニヤと妄想に酔いしれたマスターを遠巻きに見ながら、食事をし終えた客はテーブルに金を置いて店を出ていく。
普段から妄想癖がある永遠の事は周知の事実なので、皆そんな永遠は見慣れているからいつもの風景だ。
カランカラン――
「毎度ありー」
やる気があるのかないのか、反射的にいつもの挨拶で客を見送る。
と同時に不気味な笑いが漏れた。
「ふっふっふ…
やはり僕の映画には僕がゲスト出演しなければ!!
こんな情緒溢れる酒場のマスター…最高じゃないか!!」
だんだんと声を荒げながらガッツポーズをキメるその姿は、もはやこの店の名物。
客達からは自然と拍手がこぼれる。
「永遠ぁ〜可愛い〜vvv」
「カッコいいわぁ〜!」
黄色い声援を送るのは永遠のファンクラブの皆々様。
この店が流行る原因の一つに、永遠の女受けの良さが影響している。
「サンキューっ☆」
イエーイ!!
とノリノリで交わすと同時に両手でピースを作る。
その時だった。
カラン、と店のドアが開いたのは。
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