月三物語
ページ15
青木side
俺は、走っていた。アイツの家へ、何故場所が分かるって? もちろんこの界隈で俺の分からない家は無い。まして、アイツの家ほどデカイのを見逃す筈も……
『クッソ―、 ふざけやがって!何のために俺が今日、大学に行かなかったと思うんだよ! 』
心の中で悪態を突きながら、向かって居ると、後ろから月島が追っかけて来た。
「お〜い、待て! 青木、待てよ! 」
冗談じゃねぇ、止められて成るものかと渾身の力を出し走る。ヤツも速いがウエイトの軽い俺の方が勝ち、振り切って行った。
赤月の家の前に立ち、アイツが素直に出て来る訳が無いと考え付き途方に暮れていたら。
「あの、どちら様で? 」
声を掛けられた方を見たら、如何にも執事と云った風貌のオッサンが此方を見ていた。
「赤月は居ますか? 」
執事らしいオッサンは顎に手をやり、暫く考えてから聞いた。
「慶吾様ですか? 章吾様ですか? どちらに御用事なのでしょうか? 」
あっ、そーいえば、兄貴が居るんだっけ? 勿論此処は……
「じゃあ、章吾で……」
緊張の余りとんでもない事を云った気がするがまぁ、良いだろ。
「では、ファイナルОンサーで?よろしゅうございますか? 」
何て洒落の利いた執事なんだ……感動の余り叫んだ!
「ファイナルОンサー! 」
「一体お前たちは何を言ってるんだ? 佐伯もコイツなんか相手にする事無いんだぞ」
呆れ顔の章吾が居た……
「赤月章吾! お前に話がある」
溜め息をひとつ付き章吾は、その綺麗な顔に皺を寄せ家の中へ入れと身振りで示した。
*****
「ところで、私に何の用事が有るんだ? 」
章吾の部屋か? と思う程だだっ広い空間に落ち着きなくウロウロと歩き回ると、章吾は吹き出して笑いだした。
「何が、オカシイんだ! お前が大学を休んだと聞いてワザワザ来た俺を笑ったな! 」
「ヒッヒッ……ご…ごめん、だって…おっかし……」
ちょいギレした俺は、章吾に近付き両手で顔を挟むとキスをした。それも、舌を入れたディープキスだ……
「ん…うん……ン……」
激しく抵抗する章吾は、遂に平手を俺に食らわせた。
「何するんだよ! 馬鹿野郎」
肩で息をする章吾の顔は、真っ赤になっている。思わず抱きしめて、こう云っていた……
「章吾、愛してる……」
あ〜あ、言っちゃった……
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