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月三物語
最終話【大団円】

 今日は月島さんの結婚式だ。子持なんだから、今更式はいいだろと言ったらしいが、何しろ二人とも初婚だから周りにしろと煩く言われたらしい。

「うわ〜素敵ね遊木さん。とても子持には見えないわ! 」

 隣でひっきりなしに感嘆の声を上げる明日香に僕は些か辟易していた。今日の式には、赤月達と涼夫妻も同席してる。

 涼さんは、事件の直ぐ後に結婚した。もう、離れるのは嫌だと。

「始くんのお陰よ。君が私を目覚めさせてくれたから、竜と一緒になれた。本当にありがとう」

 式の時の涼さんは綺麗だったな……竜さんも格好良かったし、正に美男美女だ。
 二人で美月流を立て直し、今や以前をしのぐ程のお弟子さんが居て、忙しい合間を縫って今日の式に参列したらしい。

「始くんは大学は決まったのか? 何だって! 」

 青木さんがびっくりしたのには訳がある。実は赤月、ううん、ここにいる皆の母校に僕は入学する事に決まったからだ。

「全てはあの大学から、始まったんだよ――」

 赤月はそう言って微笑んだ。ヤツは探偵業に戻る気は無いらしい。自分の家が経営する病院には行かず、小さい個人経営の小児科に勤めて居ると聞いた。

「でも、実家から頭を下げられて来月から外科医として帰るんだとさ」

 何でも、後輩の指導を頼まれたらしい。それほど赤月は腕を見込まれてるんだ。

「私にはやらなければなら無い仕事がまだまだ有るんだよ」

 淋しかった。僕と赤月が段々、他人に――知らない人になる様で。青木さんが僕の肩を叩き、励ます。二人とも幸せになって欲しい。それが僕の幸せでもあるんだ。

「……ありがとう始君」

 ああ、また読みやがったな……じゃあ、判ってるんだろう? 僕がアンタの意思を継ぐって事が、なあ、赤月章吾さんよ――

 その時、頭の中で赤月の声が聴こえた――

《もちろん君が探偵になるのは、偶然私に逢ったからじゃないよ。全ては必然なんだ……だから、さよならは言わない。必ずまた逢えると決まっているんだから》

 馬鹿やろう、反則だぞ。こんな……こんな席で《力》を使うなんてさ――

「はじめちゃん。泣かないでよ……何だかわたしも泣きたくなるじ……ゃない……」


*―*―*

 式場の外で遊木さんがブーケを投げた。それを受け取ったのは明日香で……僕は明日香に初めてキスをした。

「今度は、僕達の番だね……」

END 僕探偵へ



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あきゅろす。
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