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月三物語
【想い】

「大成功だよ、竜君! これで美月流も安泰だ! さっき事務所から連絡があって、問合せの電話が殺到してるそうだ」

 伯父さんは満面の笑みを浮かべている。思えば伯父は人一倍、美月流の行く末を気に掛けていた。

「竜先生、お客さんですが、警察の方だと……」

 会場を出て外を見回すと男が独り寒空のなかコートの襟を立て、僕に向かって手を挙げた。

「やっぱりアンタか……」

 僕は月島という男に声を掛けて隣に立つ。

「元気そうだな。披露会を見させて貰った、あれは涼の……」

「そうだよ、涼の流技だ――」

 挑戦する様に睨むと月島は笑って話す。

「おいおい、誰も喧嘩しに此処まできた訳じゃない。実は涼の事で君に話したい事がある」

 月島は話し出した――僕が刺された、あの事件の事を。涼が刺された僕を見て自分に向かい《力》を解放したこと、あの時ハッキリと月島は分かったという。

「涼が愛してるのはお前だと。俺は認めたくないばっかりに赤月の暗示にすがった……」


『嘘だ! 嘘だろ? 涼――!!! 』



「だから頼む! 涼を……涼を幸せにして欲しい……頼む……」

 月島は深く頭を下げた。僕は約束した。必ず、涼を幸せにすると……



*―*―*

『あ、赤月探偵事務所ですか?』

 電話口に出た人は、そうだと言ったが依頼は、いまは受けられないと言った。

『以前に頼んだ、美月と申しますが赤月さんは何処に? 』

『あっ、お前この間の涼の弟だな! ほら、こないだお前が酔い潰れた時に会っただろ? 』

 通りで聴いた事のある声だと思った。赤月さんは医者になって、事務所は空だと云う。

『涼の居場所だろ? それなら、章吾から預かっている。きっと、お前が来ると言っていたからな』

 青木さんに居場所を教えて貰い電話を切った。本当はいま直ぐにでも行きたいが、もう店は閉まってる時間だ。明日必ず行こう――

 涼に逢いに……愛してると言いに行こう……











 あの女に会いに行くつもりね!……ちょうど良いわ。二人まとめて復讐するチャンスよ――



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