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月三物語
【輝き】

ピッ、ピッ、ピッ、ピッピッ

《……先生! 出血が止まりません……血圧も……》

《……章吾君!……君……》

《部長……私に任せて下さい! 月島! 死んでは駄目だ!……生きるんだ……月島ぁぁ!!!》

ピッ、ピッピ――――――




 麻酔が効いている筈なのに赤月の声が聴こえた……
『俺……死ぬのか?……』
 吸い込まれるように眠気が襲ってくる――寝ては駄目だと赤月が叫んでいるのに。

 薄れ逝く意識のなかで、何故か涼じゃなく、遊木の顔が……アイツの笑顔が浮かんだ――




「先輩! 先輩起きて下さい!」

『何だよ、遊木……俺は眠いんだ……起こすなよ。後もう少しだけ寝かせてくれ』

「先輩、先輩があ〜〜」

『分かった、分かったから泣くな……いま、起きるか……ら』


 重い瞼を開けると電球の明るさに眩しさを感じた。煩く騒ぐ声の主を探して首を横に向けると。

 そこには顔をクシャクシャにして泣いてる遊木がいた。

「俺は、助かったのか? 」

 遊木は頭をこれでもかというぐらいに振り「当たり前じゃないですか! 」と言った。

「よお、元気そうだな」

「青木……お前もな」

 青木は泣き笑いの表情で、減らず口叩きやがって、と言った。

 狭い病室をぐるりと取り囲み皆がいる。看護婦さんが出ていけと怒っていた。

 それが何故か俺には、おかしくて涙を流しながら笑ってた。生きているのは素晴らしいと思いながら――



「月島、手を出してくれないか? 」

 赤月が久しぶりにそう言った。
「何か?……良いよ……」

 赤月の真剣な表情を見たら何も言えずに、黙って両手を差し出した。

「……赤月、これは? 」

「この前、遊木を《視た》時の映像だ……」


 俺は、泣けて、泣けてしょうがなかった……
 元気になったら逢いに行こう。必ず君に……



*―*―*


 路の駅で電車を降りタクシーに乗り込む。行き場所を告げて、携帯を取りだし通話ボタンを押した。

「水月さんのお宅ですか? 遊木さんは……遊木か? もうすぐ着くから……」

 遊木は驚いて、でも電話口で泣いていた。先輩と言いながら……
 タクシーから降りたら、そこは浜から近く、汐のかおりがした。歩き出して直ぐに、遊木が立っていた――俺は、片手を挙げ近付いて行き、目の前の子に聞いた――

「坊主、名前は? 」



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