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月三物語
【生命】

『赤月さん……先輩が……お願いです。どうか……』

 電話口で遊木が泣いてる――私の頬を流れる泪は遊木のもの。悲痛の叫びが……痛い程伝わってくるから。

『遊木泣かないで、月島は必ず私が助けるから……』

 ――そう必ず――




「まさか、お前に手術して貰う事になるとはな」

 月島はそう言って笑う、だけど私には嘘がつけないんだよ……本当は怖くて仕方ない癖に……

「全て私に任せて欲しい、必ず成功させてみせるから」

 月島は私を真っ直ぐに見つめて言った。それは、一片の迷いもなく私に伝わる。

『俺の命――お前に預けた』

『ありがとう月島……』




 手術室へと月島が運ばれて行き私も準備のため歩き出した時、瞬が私に言った。

「章吾、俺は諦めねえからな。たとえお前が俺を嫌いだと言ってもだ」

 私は頷き、判ってると言って瞬を抱きしめた。

『判ってる……たとえ離れたとしても私も瞬が……』

 瞬はいつまでも待ってるだろう……私が還らないと知っていても――







「章吾君が戻って来てくれるとは嬉しいよ。君程の才能を埋もれさせるのは医学にとって大きな損失だからね」

「是清部長、今日はお願いします。実は……」

 部長は判ってると言い、隣で洗浄してる兄さんに言った。

「慶吾君も一緒に立ち会ってくれるんだ、君の友達は大丈夫さ」

「まあ、お手並拝見と行こうじゃないか章吾」

 私は頷いて言った。「お願いします」と。




 手術台の上に月島が横たわっている。麻酔が効いて居るためにピクリとも動かない。私は必ず助けると誓った。友を……

 そして振り返りスタッフに言った。



「これより脳腫瘍のオペを開始します……」



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