月三物語
【宣言】
―青木―
章吾が居なくなった――
空っぽのマンションで俺は、ただ立ち尽くしていた。
「何でだよ……章吾――」
医者になるからといって何故、俺達が別れなくてはならないんだ?
『納得がいかねえ! 冗談じゃねえぞ! ふざけるなよ……』
実家に行き執事に聞くと病院に居るという。
「青木様、章吾様をどうかよろしくお願いします」
執事のオッサンに深く頭を下げられ俺は堅く誓った。アイツは俺が守ると――
*―*―*
「また君か……一体何の用事なのかね? 」
章吾の親父に面談を申込み、前の様に院長室で待ってると、やって来るなり、親父はそう言った。
「章吾の親父……じゃねえ、お父さん! 章吾を俺に下さい! 」
しばらく親父は固まっていたが急に笑い出した。
「何がおかしい? 俺は本気だぜ。章吾を俺にくれ」
「物じゃ有るまいし……くれとは何だね? 第一君も章吾も男じゃないか……人の趣味をとやかく言うつもりは無いがね、自分の息子だと話は別だ」
「そんな事は、認められない。それに、章吾には結婚相手が決まっている。然るべき家のご令嬢がな……」
そうだろうと思った。俺は親父にニヤリと笑いかけ言ってやった。
「別に、アンタに認めて貰おうなんて考えちゃいないさ。ただ、宣言しに来ただけだ」
親父は宣言? と問い返す。俺はドアに手をかけ言った。
「章吾は俺にしか、幸せに出来ねえんだよ。医者になるなら構わねえさ。でも、俺以外の奴と結婚なんざ、ちゃんちゃらオカシイぜ」
言うだけいってスッキリした俺は、親父を残し部屋から出た。章吾に逢うために――
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