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月三物語
【取引】

「やっぱり病院てとこは、苦手だぜ……」

 病院の受付に言って俺は、院長室の椅子に座って待っていた。誰をって? そりゃ院長室なんだから院長―章吾の親父に決まってるじゃねぇか。

「待たせたな、章吾の使いと言ったが何の用事だ? 」

 入って来るなり、胡散臭そうに俺を見る親父(章吾の)は忙しそうに時計をチラリと見て聞いた。

「これを頼まれて来たんです。次いでに返事も」

 章吾は親父似だな、とボワッと考えている間に手紙を見てた親父の表情が真剣になって、読み終えた時には、満足そうに変わった。

「章吾に判ったと伝えてくれ、家に戻ってこいと言ってたとな」

 どうも。と言って椅子から立ち上がると、親父はちょっと待てと言って引き出しから小切手を出すと、サインをして俺に渡した。

「章吾に渡してくれ、周りを整理するための金だと言ってな」

 それを聞いて俺はどういう事だ? と聞こうとしたが、親父はせわしげに行ってしまった。

 考えてもしょうがないから、章吾に聞こうと事務所に戻って行ったら、ヤツが荷物の整理をしているじゃないか!

 凄く嫌な予感がした俺は章吾に聞く。

「なあ、何処に行くんだよ! 」

 章吾は悲しい顔をして黙ったまま首を横に振った。

「黙ってないで、なんとか言えよ! なあ、章吾……」

 怒るより、なにより哀しくて、しょうがなかった。多分コイツはあの親父と取引したんだ……何かと引き替えに。

「……瞬、私は……病院……」


 その時、物凄い勢いでドアが開かれ、章吾と良く似た男が入ってくるなり、怒鳴りまくった。

「おい! 章吾おまえ〜〜今更何で医者になるんだよ! 」


「「医者〜〜!!!??」」

 その場にいた誰もが、唖然として口をきけないでいた――

僕探偵へ続く――



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