月三物語
【確信】
「おい、起きろよ。まったく、やってらんね〜な」
何で俺が、こんなヤツの面倒見なきゃなんねぇんだか。とブツブツ文句を言いながら声の主は、僕を担ぎあげた。
「ほっといてくれよ……」
怒鳴ったつもりだった声は、弱々しく自分の耳に聴こえる。
「別に俺は、お前がどうなろうが知ったこっちゃないけどな、章吾が頼むって言うからしょうがねぇだろ? アイツに頼まれたら、断れね〜もん俺」
声の主を良く見ようと身をよじり顔を見たが、知らない奴だ。
「章吾? 誰だそれ? 」
僕が聞いたら、こともなげに言い放った。この男は――
「何だ?知らねぇの? 赤月だよ。あっ! 駄目だからなアイツは俺のものだから」
「――???……!!! 」
アルコールで鈍った頭でも、男が言ったことが分かり、そうだったのかと納得しかかったが。
「違うぜ、アイツも俺もゲイじゃないからな! 」
まるで頭の中を覗かれたかの様に言われ気味が悪いと思ったけど。
「理屈じゃねぇんだよ、アイツだから好きになったんだよ」
そうだ――姉弟だと思ってた時でも、想いは止められなかった。諦めるなんて出来ないよ……
僕は男に言った。もう、大丈夫だから。赤月さんに伝えてと――
「そうか? そりゃ良かった」
ドサッと僕を降ろし立ち去ろうとした男に名を尋ねた。
「俺? 青木瞬介って者だ。運び屋をやってる、仕事なら何時でも請け負うぜ」
そう言うと運び屋は颯爽とドアから出て行った。僕に名刺を残して――
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