運び屋 青木瞬介の日常
ハードボイルドな俺を見ろ
PM.11:00〜地下駐車場
既に営業が終了してるデパートの駐車場は、シンと静まり返っている。
駐車してある車もまばらで、従業員専用のドアから、男が辺りを伺いながら歩いて来た。
手には、店のロゴが入った紙袋を持ち、キョロキョロと落ち着きなく、しきりに髪をかき上げている様は、まさしくナルシー。
「遅せえぜ、何時まで待たせる気だ? 待ち合わせには五分前が、常識だろ?」
「だ、だだ誰だ?!」
黒塗りのワゴンの影から、細身の男が現れた。
姿だけ見ればイケメンで通るだろうが如何せん、面は酷く不細工で、ナルシーは少し気の毒になった。
「悪かったな、不細工で」
口に出してはいない筈なのに、ズバリと思ってる事を言われて、ナルシーは動揺している。
「ち、ちゃんと品物は持って来たんだろうな?」
「当たり前だろ? 取引にブツが無いんじゃ、話にならない。ホラ、ここにある」
男が手に持っているのは、まさしく店のロゴが入った紙袋!
『確認は取れた。後はあの方が寄越した助っ人に全てを任せれば良い……』
ナルシーの邪(ヨコシマ)な考えを破り、男は豪快に笑い出した!
「なっ、何がおかしい?!」
男は腹を抱えて、如何にも、おかしそうに笑っている。
「残念でした〜また来てねん」
違う方向から、妙に色気のある声がして慌てて振り向くと、スレンダーな美女が、こちらに手を振りながら歩いて来る所だった。
「アンタの悪行の数々、お天とさんが許しても、オレは赦す訳にはいかないな〜」
栗色のウエーブが、掛った髪をかき上げて妖しく微笑む。
「おっと、待った! 動くんじゃねえ。いま、ブツの交換と、いこうじゃねえか」
相手が二人に対して、こちらは一人。
元々小悪党のナルシーは震え上がり話す事も出来ない。
「そこまでだ! 全員両手を挙げて、後ろを向け!」
闇の中から、突如ライトが当たり眩しさに目を細める。
黒塗りのワゴンがライトを付けた為だ。
隣で、不細工な男が舌打ちをした処をみると、奴も予想外の展開らしい。
「月華警察の者だ。タレコミがあった。今夜、地下駐車場で麻薬の取引が行われて居るとな」
ナルシーは思った。『麻薬? そんな馬鹿な!』と。
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