運び屋 青木瞬介の日常
俺の習慣に口を挟むな
何時もの事ながら携帯が鳴って泥の様に眠りに落ちていた俺は目を覚ました。
携帯のディスプレイを見ると玲児のヤツだったので、無視を決め込み、もう一度幸せな夢を見直そうと枕に顔を押し付けた所で、玄関から激しくチャイムを鳴らす音が聞こえた。
「シュン居るのは分かってるんだからね。早く出なよ」
俺は舌打ちをしてベッドから荒々しく飛び起き裸のまま、玄関に行きドアを勢い良く開けた。
「ちょっと! なんて格好で出てくるのさ! お客さんも居るのに……」
言われて見ると確かに玲児の後ろに隠れる様にして女が顔に両手を当てている。
でも、ちゃっかり両手の隙間から覗いてるぜ、お嬢さん。
「ああ、悪いな……お前だけかと思ったから」
別段隠しもせずに、バスルームへ行きシャワーを浴び着替えてから戻ると玲児と連れは勝手にティータイムと洒落込んでいた。
「玲児、俺の分は? 」
玲児はかなり怒っているらしく、俺の話しも無視をしてやがる。おもむろに箱を取りだし皿に載せたモノそれは……
「あっ、啓介兄のケーキ! 」
叔父が経営してる喫茶【まどろみ】のチーズケーキだ。ああ、メチャクソ美味いんだぜ。
「食べたかったら自分で飲みものは入れてくるんだね。どうせシュンは珈琲なんだからさあ」
そうか、玲児はヤツと同じで紅茶党なんだ。面倒臭いが仕方ない、啓介兄のケーキのためだ。珈琲を自分でサイフォンにセットしてケーキを見張るために部屋に戻るとちょうど奴らは食べ終った所だった。
「シュン、こちらは依頼人の一臣凪子(かずおみなぎこ)さん。彼女が運び屋に依頼したいと言ったから連れて来たのさ。それなのにシュンてば、スッポンポンで出て来るんだもの……」
仕方ねえだろう? 何か着てると寝れねぇんだから。と言いたかったが一応、客の前なので黙って聞いていた。
「彼女はデパートの洋服売り場に勤めてるんだけど、最近やってきた上司がどうやら、横流しをしてるらしいんだ。それの片棒を担がされそうになって相談して来たんだよ」
相談? お前にか? と言いたかったが、また機嫌が悪くなっても困る(ケーキのためだ)から我慢して真面目な顔で聞いている。
依頼人は若い女だ、まだ入社して2年てとこか、玲児の話しを聞きながら真剣な顔で頷いている。
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