運び屋 青木瞬介の日常
13
――結果報告――
俺は、赤月探偵事務所の前に居て、例のセリフを言いながらドアを開けた。
「毎度〜〜迅速、確実、あ、アレ?留守かぁ?」
事務所の中は、シンと静まり返っていた。
と思ったが、何処かでス―ス―音がするから近付いて見たら赤月がソファ―で長い足を窮屈そうに曲げ、横向きになって気持ち良く昼寝をしていた。
「お…い。赤月……」
声を掛けようとしたが思い直して、そ〜っと近付き顔を覗き込んだ……
間近で見る赤月の顔から目が離せない……
長く背中迄伸ばした漆黒の髪にソッと手を伸ばし触ってみる。
想像した通りサラサラの艶つやだ……
『うわっ。ヤベ―俺…』
喉はカラカラだし、手まで震えてきちまった。
その時、赤月が寝言を言った。信じられねえ……
「しゅん…お……る 」
何だよ?俺は、知らね―ぞ。オマエが悪いんだからな。
俺は、ソファ―から降り赤月の顔に近付く。
あと、5センチ…だんだん心臓が速く打つ。
あと、1センチ…もう既にメチャクチャ速いってもんじゃね――
あと……唇が触れ……
「こんちわ。アレ?誰も居ない?――」
元気に始くんが出勤して来た!
その声で赤月の目も覚めて……目の前に俺が居るのを確認すると声にならない悲鳴を上げた。
「――??!!――……」
「お、おま、え…今、なにを?し……した?」
メチャクチャ、ドモってんぜ、しょ〜ごちゃん。
「いや、なんとなく……あんまり気持ち良く寝てたからさあ〜〜でも、何もしてねえぜ。」
(オマエの寝言以外はな……)
≪≪≪≪≪≪≪
報告をした俺に、報酬を支払い赤月は、サッサと帰れと言った。
「毎度あり!また、よろしく頼むな章吾ちゃん。」
赤月は、何とも云えない顔をした。アレ?コイツのこんな顔…どっかで見た事が……
『何か…凄く大切な、何かを俺。忘れてる?』
心の何処かにぽっかり穴が空いた様な気がした……
とにも、かくにも 今回のお仕事終了だ……お疲れさん!
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