僕が探偵になった訳 その四 連れて来られた所は、大分年季が入った(ボロい)ビルの二階だった。 「ここホントに営業してんの? まさか嘘ついて、おれをどっかに売り飛ばすとか考えてんじゃないだろうな! だからさっき好都合だとか、ぬかしてたんだな!」 僕はそう言うなり、脱兎の如く駆け出した! だが、足を出しているのに少しも前に進まない。 赤月が僕の制服の衿を掴んでいたからだった。 「始くん、ここを良く見てくれ」 赤月が指を差した先には―― ≪赤月探偵事務所≫ 失せもの浮気調査何でも承りますと書いてあった。 「さあ始くん。そこに座ってくれ、実は最近助手の一人が辞めてしまってね。仕方がないから、所長である私が張り込みをしていたんだよ。そしたら、今朝君を見掛けてピン!と来たんだ」 勝手な事をベラベラ喋る赤月に、半ば呆れて僕は言った。 「探偵なんておれには無理だ。向いてないと思う」 「そんな事はない。君にはその逃げ足と……が有るじゃないか」 「なんでそれを?」 「それが私の、探偵たる所以だよ……」 [前頁][次頁] [戻る] |