僕が探偵になった訳 【予兆】 「始君に私から依頼があるんだ……」 青木さんが来た、次の週のことだった。赤月が僕に言った―― 「依頼ってなにを? 」 今までで一番嫌な予感がする。それは、この前来た人と関係があると僕は直感で感じた。 「前に話した事があったろう? 月島の話を……」 ああ……月島さんと涼さんの……?! まさか! 「先週来た人って、まさか!」 「そうだよ、竜だ。彼は私を知らないがね」 赤月は僕を真っ直ぐに見て話し出した。自分でも持て余してる僕の≪力≫の事を―― 「分かりました……【依頼】を請けます」 *** 病院への廊下を赤月と歩く。今でも信じられない、赤月がこんな立派な病院の息子だなんて。 「始君、ここだよ」 止まったドアの横には、プレートがあって『美月涼』と書かれてあった。 ドアを開けると、そこは温室に迷い込んだかと思うほど花ばなが咲き乱れ良い薫りが鼻をくすぐる。 窓際のベッドには誰か寝ていて、傍に寄り添う様に月島さんがいた。 ――そして、あの人も…… 「……きみが? 涼を目覚めさせるのか? 」 僕は頷き、ベッドまで歩いて行く。月島さんと竜さんは僕に場所を譲り、後ろで待っている。 近付くにつれ、寝てる人の顔が見える。確かに綺麗だ――でも、 まるで人形の様に生気がない。日に当たる事のない肌は白く、紅い唇だけが生きている証しのようだ。 「始くん……頼むよ、涼を……」 月島さんが言うと竜さんも頷き、僕をすがるような目でみつめる。 僕に……出来るのだろうか? ベッド脇の椅子に座りソッと涼さんの手を握る―― 意識が段々と遠のいていく――現実から『夢』の中へと、僕は旅立って行った―― [前頁][次頁] [戻る] |