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人魚シリーズ


 私の記憶の中の王子さまは金色の髪に、海の色よりも深い碧だったはず。

 だけど今、目の前にいる男の子は、日本人だから当たり前なんだけど、黒い髪と同じ色の瞳。

 でも、言葉とは裏腹にその瞳は優しく、どこか懐かしさを感じる。


「なっ、なによ! 誰がアンタの裸なんか! 行こ、美海」

 香苗が私の腕を掴み引っ張って行こうとするが、足が動かず、目を反らす事も出来ない。

 私達は見つめ合ったまま、かな縛りのようになっていた。

「海斗(カイト)な〜に見つめ合っちゃってんの?」

「……星弥(セイヤ)」

 その途端、止まってた時が動き出した。
 香苗に引っ張られるままにその場から離れる。
 後ろを振り返りながら。


    *****

「ふ〜ん。あの子なんだ〜リオンの言ってた子って」

「星弥、分かってるな?」

「大丈夫だって、今の姿じゃ分かりっこないさ」

 星弥と呼ばれた男は、楽しそうに笑っている。

 海斗(リオン)は不安になった。
(コイツ、面白がってるな)

「さあ海斗、教室に戻ろうぜ」

 僕は溜め息をひとつ付きシャワーを浴びに行く。



    *****

「香苗、香苗ってば。どうして、そんな怒ってるの?」

 結局、水着を着替えるためにシャワー室まで香苗は私を引っ張って来た。

「アイツってば、本当あんな奴だとは思わなかったよ」

「香苗、あの子知ってるの?」

「私のクラスに先週、転校してきたばっかだよ。あの一緒にいた奴と二人で。いい奴だと思ったのに……」

 着替えを済まし、教室まで二人で歩きながら香苗が話してくれた。

 香苗の教室まで来た時、さっきの二人が女の子達に囲まれているのが見えた。

「ウチの教室では優しくて、かっこいいって人気があんだよね。でも、何で美海にあんな事言ったんだろ」

 香苗の言う事が段々聞こえなくなって来て――
 目の前が暗くなった途端、私の意識が途切れた

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