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人魚シリーズ


「美海、どうしたの? ボ〜ッとして」

 香苗の言葉にハッと我に返った私は、もっと良く見ようと人垣を垣き分け前へ出た。

 後ろから香苗が「どうしたのよ!」と言いながら追い掛けて来る。

 何故かは、判らない。
 でも、見失ってはならないという気持ちが、私を衝き動かしていた。

 プールサイドをゴールに向かって、走って行く。 
 心臓の音がすぐ近くで聞こえる。速く、強く。

 着いた時すでに、レースは終わっていて、プールから上がって来た男子達のその中に。

(王子さま?)

 ボンヤリとした記憶の中の人魚の王子さまに似ている様で……

(そんな訳無い……それに髪と瞳の色が違う)

 だけど、頭では判ってはいるのだけど。
 懐かしさが込みあげてきて涙が止まらない――

「美海! 本当にどうしちゃった……」

 香苗が私を呼んだ時、その男の子が振り返り私を見た。
 二人の視線が絡み合い。やがて、男の子が私に微笑み。

 そして、こう言った。

「なにか用か? それとも、男の裸に興味でもあるのか?」





 これが……アイツと私の、最悪の出会いだった……

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あきゅろす。
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