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人魚シリーズ
〜再会〜セルジュ
〜再会〜セルジュ

 意識が途切れる前に見た顔が心配そうに覗き込んでいる。

「どうして僕をここに? 君は誰なの? 」

 僕の質問に答えずに……彼の瞳から涙が一筋流れた。不思議に思って僕は聞く。

「どうして泣いているの? 」

 そばに近寄りソッと頬を撫でたら彼が跳び上がるようにビクッとした。

「ご、ゴメンなさい……!?」

 思わず謝った僕は何も着てない事に気が付いた。恥ずかしさで顔がカッと熱くなる。

 すると彼は毛布で僕をくるみ抱きしめて優しく言った。
 何故か彼の体温を感じた時、安心出来る様な気がして……

 不意に荷物を無くした事に気付き不安で泣きたくなった時、足元で聞き馴れない鳴き声が聞こえた。恐怖で身動きが出来ない。

「僕の家の犬だよ。名前はジョンって云うんだ。僕はセイだよ」

 彼……セイは抱きしめた腕に力をいれた。少し痛くて顔をしかめたら腕を離して謝った。

 セイのジョンが僕のバッグを見つけてくれて、やっと着替えてセイにお礼を言って学校へ行こうとした時、腕を掴まれ引き寄せられ……キスをされた……

 僕はそんな経験がなくて、それに好きな人でもないのに……悔しくて思わず謝るセイの頬を叩き、飛び出した。

 走って走って、やがてセイの僕を呼ぶ声が聞こえたけど、立ち止まらずに走って行った――

***

 だからテスト休みで帰宅した生徒の中にセイを見掛けた時は、絶対無視をするって決めたんだ。

 だのに……顔を見る度に胸が締め付けられる。

 苦しくて、涙が出そうになるんだ……どうして? 僕は、どうしちゃったんだろ……



 セイ……僕は、セイのことが……





 好き……なのかな?




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あきゅろす。
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