人魚シリーズ
恋におちた瞬間〜セイ
目が覚めた君は僕に聞いた。
「どうして僕をここに? 君は誰なの? 」
姿は変わっても美しい君にただ、目が離せずにいる僕。心臓をぎゅっと掴まれたように苦しい。
「どうして泣いてるの? 」
いつの間にか涙が流れてたらしい。彼は僕に近付いて来て長く綺麗な指で僕の頬をソッと撫でる。
触れられた途端に電流が流れたようにビクンとした僕にびっくりしたように目を見開いた。
「ご、ゴメンなさい……!?」
ここに来てやっと自分の姿に気が付いた彼は恥ずかしさで真っ赤になった。
「大丈夫だよ……誰にも、僕以外は見られてないから」
毛布で体をくるみ抱きしめると君は目に涙を溜め頷く。
「どうしよう僕……荷物をなくしちゃった……」
泣き出す寸前の彼に僕はただ、おろおろとしてるとジョンが足元で吠えた。
腕の中で驚きで体を硬くしてる彼に安心させる様に優しく声をかけた。
「僕の家の犬だよ。名前はジョンって云うんだ。僕はセイだよ」
「……ジョン? セイ……?」
綺麗な声で僕の名を呼ぶ。僕は抱きしめた腕に力が入って、彼が痛そうな顔をしたから慌てて腕を放し謝った。そして名を聞くと彼は、僕を見つめて言った。
「僕は……セルジュ……」
ああ……やっぱり僕は……君の事が……
震える手をそっと伸ばし、セルジュの髪を撫でる。セルジュは驚きに目を見開いている。
「セルジュ……僕は……」
その時、ジョンが口に加えていたバッグを僕達の前に置いた。
「あっ、僕のバッグだ! 」
嬉しそうにジョンから受け取ると、洋服を出して着替え出した。
目の前で着替えるセルジュを見てられなくて、目を反らす。
「どうもありがとう。セイ」
着替え終わったセルジュはバッグを持ち、行こうとした。
僕はセルジュの腕をとっさに掴み僕に引き寄せて……気が付いたら唇を重ねていた。
離した時僕は「……セルジュ、ゴメン……」
最後まで言わない内に、不意に頬が熱くなった。セルジュが僕を叩いたから。
「……親切そうにして……酷いよっ! ……」
瞳からは涙がポロポロと流れ、落ちた涙はひとつの塊になった。
『――真珠だ――……』
視線を上に上げた時にはセルジュはもう、居なかった……
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