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人魚シリーズ
15

 海斗は少し離れて付いて来ている。
 私は香苗の言葉を思い出して、変に意識してしまう。

「おい、大丈夫なのか? 顔が赤いぞ」

 言われて益々、真っ赤になったみたいで、海斗が手を延ばし額に手を置いた。

「熱は無いみたいだな。でも、何で赤いんだ?」

 そんな事言われても……まさか、海斗が気になるからなんて言える訳が無い。

「……何でもない。もう、帰っても良いよ。大丈夫だから」

 海斗は私の目をジッと見ている。
 優しい表情で……言葉は悪いけど本当は優しい人なんだ。

「判った。でもな、水泳は止めた方が良い」

 いきなり何を言うのかと思ったら、水泳を止めろですって?

「何を言って……」

「これ以上泳いだら、お前は死ぬ……」


 馬鹿な事を言って!
 頭に血が上った私は、海斗に言いながらポカポカ叩いた。

「水泳止めろだなんて。あなただって泳ぐのに……ひどいっ! 私はどこも悪くなんか……」

 悔しかった。海斗も同じだと……泳ぐのが楽しくて仕方ない仲間だと思ったから、私に止めろと言った事が信じられなくて。

  海斗は黙って私に叩かれていた。
 瞳には悲しみの色を浮かべて。

 自分でも、最近体調が悪い事が分かってた。
 泳いだ後などは特に。
 でも怖くて、もしかしたら二度と泳げなくなると思っただけで、体の半分が引き裂かれるような気がする。

 両親を海で亡くしては居たけど、決して嫌いにはなれなかった。

『人魚の王子さま』がいる海を。

 泣きながら叩く私に、海斗は何も言ってはくれなかった……

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