人魚シリーズ
ホントの気持ち
先輩はセイを見てフッと微笑み僕に向かって話す。
「どうやら君をこんな姿にした張本人がおでましの様だ。残念だけど今日はこれで止めておくよ」
その言葉にセイが辛そうな顔と先輩に対しての怒りが入り混じった顔をした。
「君達、名前は? 」
先輩に名前を聞かれて答えない訳にはいかない。僕とセイは渋々名前を言った。
「セルジュ・フォン・カンパリーノです」
「セイ・コルニャックです」
「私はジルベール・スコッチだよ。ジルと呼んでくれ仔猫ちゃん。あ、人魚姫と呼んだ方が良いのか……」
僕は男です!と言っても笑ってじゃあねと手を振りながら、先輩は行ってしまった。
後に取り残された僕とセイの間には気まずいふいんきが流れる。
「セルジュ……ごめんね」
セイが本当に済まなそうに謝るから何時までも怒ってられなくなって赦す事にした。
「もう、良いよ。それよりも早く元に戻して……」
それを聞いたセイが更に辛そうな顔をして言った。
「ごめんね。変身が中途半端だと僕では戻せられないとモン先生が言ってて、連れて来てと言われたんだ……」
それを聞いて涙がまた溢れてくる。セイは僕の事が心配で来てくれたんじゃないんだ……先生に言われたから迎えに来たんだね。
「セルジュ、本当にごめんね。泣かないで……」
そっと涙を拭いてくれるセイに余計止まらなくなって、とうとうポロリと真珠が溢れ落ちた。
「もう…セイは…良いから。僕…一人で先生…の処へ行く… 」
やっとの事でそれだけ言うと、セイの手を振りほどき走ろうとした。けど、セイが僕の手を掴み離さない。
「離してよ……ちゃんと先生の処に行くから……」
「セルジュ……心配だから、僕も一緒に行く」
かばう様に肩を抱き、二人で歩き出す。僕はドキドキして離れたかったけど、セイは掴んだ手を緩めてくれない。
「セイ、痛いよ。そんなに力を入れないで……」
僕がそう云うとセイは立ちどまって僕を見た。真っ赤な顔で……
そして、ビックリした僕を優しく抱きしめてセイが言ったんだ。
『セルジュ、大好きだよ』って。
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