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人魚シリーズ
実験の果てに

「それじゃあ、ペアの片方づつから魔法を掛けてみようか」

 モン先生の合図と共に各々が、ペアになった相手に魔法を掛けて行く。僕とセイはどちらから、獣人になるかで揉めていた。

「セルジュからで良いよ」

「……君からやりなよ……」

 お互いに相手からと譲り合って始めない僕らにモン先生が近付いて来て言った。

「君達は、まだ始めないのかね。早くしないと時間が足りなくなるぞ。この課題が出来なければ宿題になるからな」

 その言葉にセイが折れて僕が先に魔法を掛ける事になった。

「皆どうじゃな? 変身術は習ってる筈じゃが、巧くいかないペアは有るかな? 」

 変身術は僕の得意分野だ。セイに何になりたいか一応、聞いてから呪文を唱えたら、希望通りにユニコーンの姿になった。

「ほう、流石じゃな。上級生でもこんなに巧くはいかないぞ」

 滅多に誉めたりしないモン先生に言われ頬が上気するのが自分でも判る。

「さて、変身は皆、済んだかの?次は、本題の魔法薬の調合じゃな……」

 調合表を渡されて魔法で火を着けて、材料を鍋に入れて行く。

「えっと、イモリの尻尾と蛇の鱗、鉤鼠の爪に人魚の……髪」

 最後の髪は気に食わなかったが全て鍋へと入れて煮詰め、出来上がった薬をセイ・ユニコーンに飲ませた。

「やっぱりセルジュと組んで良かったよ」

 元に戻ったセイがニッコリと微笑えむ。僕はそっぽを向いたまま、礼を言った。

「セルジュはどんな姿になりたいの? 」

 セイが聞いてきたけど、僕は何でも良いと答えて目を閉じた。セイは困った様に微かに溜め息を付いて、呪文を唱え出す。

 呪文を唱え終わった筈なのに、辺りが騒がしい。そ〜っと目を開けた僕の前にはセイが真っ赤な顔をして立っていた。

「どうしたの? 僕は……」

 おかしい……獣人になったら声が動物になる筈なのに……

「セイ・コルニャック! 君は何を考えているんだ? 」

 モン先生の呆れ声に、不安になった僕は周りをキョロキョロ見渡すと、生徒の顔が例外なく皆、真っ赤になっている。

「セイ! 一体……」

 抗議の声を上げかけた僕に、隣から鏡が回って来て、覗き込んだ僕は思わず叫んだ!

「何だ! コレは?! 」


 そこに映っていたのは――

 人間の姿のまま、頭からはピンと立った耳がピコッと出て、お尻からは長い尻尾がユラユラと動いている猫人間が居た。




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