人魚シリーズ
出会い迄の経緯
魔法魔術学校の入学証明書と共に青い薬を渡された。僕は指で摘んで、疑いの眼差しを婆様に送る。
「婆様、コレは一体なに? 」
良く見ると、青い薬はボンヤリと光を放っていて、とても飲める代物には見えない。
「セルジュや、この薬は浜辺に着いてから飲むんだよ。でないと、命に関わるからね」
そう言って、僕の手に押し付けた。僕は少しパニックになって、婆様を睨み付けて言った。
「命に関わるって……そんな薬を可愛いひ孫に飲ませるの? 」
涙目になって、抗議の声を上げた僕の髪をクシャリと掻き回し、婆様は笑いながら言う。
「可愛いひ孫にそんな怖い薬など与える訳無いだろ。人間になると水中では息が出来ないだろ? だから、浜辺で飲みなと言ったのさ」
成程……って、何だって? 人間! 何でそんな者にならなきゃいけないんだ?
頭の中でグルグルと考えていたら、婆様が話は終わりとばかり、僕を急き立てる様にイルカに乗れと言いながら、荷物を投げて寄越した。
「……婆様。行って来るよ」
「はいよ。元気でな」
イルカのクーリーに「浜辺迄、頼むよ」と言って頭を撫でると、クーリーは張り切って出発した。
***
陸が近付いて来て来た。クーリーは浜辺までは行かれない。一旦浜に上がってしまうと、自力で海迄は戻れ無いからだ。
仕方ないから、僕は自分で浜辺へと泳いで行った。
水中から上がると、直ぐ息が苦しくなる。周りを見渡すと誰も居ない様だ。
青い薬を取り出すと、口の中に入れた。物凄い苦しみが僕を襲う。遠のいて行く意識の中で、誰かの声が聴こえた――
『大丈夫かい? 綺麗な人魚さん――』
見られた?! 薄く目を開けた、僕の瞳に映ったのは――金色の髪に、深い海のような蒼い瞳の僕と同じ歳ぐらいの男の子だった。
――そう……セイ、奴だった。
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