人魚シリーズ
セルジュ
――どこまでも続く青い海――
母なる海に抱かれて、僕らは生きている。いや、生かされているのかも知れない――
人魚である僕らは海の中でしか生きている事が出来ない。それなのに人間と云う生き物のお陰で、年々汚染が進み少数の人間が住んでいる場所か、全くの無人島以外は綺麗な浜辺はなくなってしまった。
それを考えると何故一部の人魚が人間などになりたいのか――
理解が出来なかった。つい、この前までは。
「セル! 授業が始まるよ。早く行かないと、モン先生に宿題出される! 」
チームメートのトミーが僕を引っ張り教室まで走る。掛けている眼鏡がズリ落ちる程に。
何とかギリギリ始まりのチャイムが鳴る前に席に着き、先生がやって来る迄には、実験道具を揃えて予習の為の教科書を開いていた。
「諸君おはよう! 遅刻をした者は居ないかね? 」
モン先生は小さな体一杯まで伸ばした白い顎髭が自慢の小人族の魔法薬担当の先生だ。
体は小さいが、怒らしたらどんな報復が有るか……先輩たちに聞いて知っていた僕たちは決して逆らわず、遅刻は絶対にしない。
「では、授業を始めるかね。今日は魔法で獣人になった人を元の姿に戻す薬の調合をしよう」
隣り合った人とペアを組み、実験をすると言われて、トミーと一緒だと思ったが……
「よろしく、セルジュ」
差し出された手の主は、僕が一番組みたくないと思う奴だった。
***
「ああ、よろしく。セイ」
視線を反らしたまま、握手をする僕を気にする風でもなく、にこやかに話し掛けて来る。
「セルジュと組むのは初めてだね。今日の実験は難しそうだったから君と一緒で良かったよ」
そう言って笑う奴は、爽やかなのに僕には腹立たしくて、悪いと思っても視線をずらしてしまう。
「セルジュ? どうかした? 」
何故僕が奴を避けなければならないのか。こんな事なら、婆様の命令など聞いてこんな処に来なければ良かったのに――
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