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人魚シリーズ
11

 海斗は保健の先生らしい人を睨み付けている。

「先生……ですよね?」

 香苗が聞くと、白衣を着た若い先生らしき人は、ニッコリと笑って話した。

「今週から赴任して来た緒方樹音(ジュネ)です。よろしく」

 香苗が私にこっそり言う。

「男の先生でも、あんな綺麗な人だったらいいね」

 確かに下手すれば女より綺麗かも。
 ウェーブのかかった栗色の長い髪は後ろで結んでいて、細面の端正な顔に眼鏡がよく似合う。

「君、何処か怪我でもした?」

 片手で眼鏡をスッと上げて私に話し掛けて来る。
 何と言って良いか分からず口ごもっていると、海斗がぶっきらぼうに事情を説明した。

「コイツが急に倒れたんだ」

「こら、コイツじゃ無いだろ。女の子には優しくしなきゃね」

 樹音先生が海斗を叱るが本気じゃ無くて、いたずらっ子を優しく叱るお母さんみたい。

「先生達って、もしかして……」

 香苗が聞くと、樹音先生は、ニッコリ笑い「親戚なんだよ」と話した。

「やっぱり! 緒方って言ったからそうじゃ無いかな〜なんて」 香苗は同じクラスなんだっけ。
 ぼ〜っとしてたら、海斗と星哉は「授業が始まる!」と慌てて出ていった。

「香苗ありがと。早く行ったほうがいいよ」

 香苗は「うん」って返事をするけど、なかなか行こうとはしない。

「ねぇ、美海。あのさ……」

 ベッドに近寄り、耳元でコッソリ言う。

「さっき美海が倒れた時にね。海斗が真っ青な顔になって、おれが運ぶって聞かなかったんだ」

 もしかして、海斗は美海の事、気になるんじゃない?


 香苗ったら、海斗が私を?
 あんな事言ったのに。

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