人魚シリーズ
10
城の中は思ったより酷くなかったので、ホッとした僕達だが、声の主は何処にも居ない。
「魔女さん……どこに居るんですか?」
シンと、静まり返った広間に僕の声が響き渡る。
隣に居るセイヤが肩をすくめ、オレは知らないとばかりにぶらついている。
「リオン、もう帰ろうぜ。何時までもここに居たって……??」
その時、セイヤが触っていたテーブルの上の龍の置物が、弾みでグルッと回った! そして――
今まで壁だった場所にはポッカリと開いた空間が……
「うァ!?あ〜ぁ〜……」
「セイヤ!?」
ちょうど壁に寄りかかってたセイヤが、その中に吸い込まれるように落ちていった。
「セイヤ?……」
恐ごわ壁の中を覗き込み、セイヤを呼ぶ。
と。「イタタタ……何だよこれは! ふざけるなよな!」
悪態をついている。
とりあえず無事な様で、ホッとした僕はセイヤの後を追うために壁の中へ。
中は真っ暗で手探りで進むと、いきなり足元に何も無くなりそのまま滑り落ちて行く。
着いた所は薄ぼんやりと明るく、周りを見渡すとセイヤが海草に絡まりもがいて居た。
「何だあ〜!! おい、リオンなんとかしてくれ!」
助けようと手を伸ばした時、声を掛けられその手が止まる。
「外しちゃ駄目だよ。君の願いを叶えて欲しければね」
「あなたは?―― 」
「私? 君の捜していた者だよ」
「あの……伝説の魔女さんでは無い……ですよね?」
「ん? 君の目には、私が女に見えるとでも?」
確かに女の人には見えない。
が、僕が探していた事を知ってるこの人は誰なんだろう?
考え込む僕――
「分かった、確かに私は伝説の魔女では無いが、ある意味嘘でもないんだよ。何故なら、婆さんは引退したから。そして襲名したのはひ孫である私『セルジュ・フォン・カンパリーノ』なのさ」
「おい! カンパリソーダだか何だか分からないが、いい加減外してくれよ!」
「うるさい!」
セイヤに怒鳴り返すその形相はまるで鬼のようだ。
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