怪盗☆Blackパンサー
名刀は真実を語る
「さて、そろそろ良いかな〜」
レイが言ったのが合図の様に、屋敷内が急に慌ただしくなった。組員達が外にバタバタ出て怒鳴っているし、警察の人間も素が出て無線で呼び掛けている。
「レイ……一体何を?」
思わず聞いたおれに、レイは鼻を鳴らし笑う。
「実はね〜もう、頂いているんだよね」
得意げに背中から出したのは、まさしく《名刀 吉良一番星》!
「い、いつの間に?!」
びっくりしたおれに、レイはヒラヒラと手を振り言った。
「マコ。悪いけど《視て》くれないかな?」
レイが言った《視る》というのは、おれの《力》である、サイコメトリーの事で、物や場所の記憶を探る能力の事だ。
この場合の《視る》というのは、刀の記憶を―持ち主の事を探る訳なんだ。
「キツイかな? でも、今回だけは《視て》欲しいんだ。『本物』かどうかを……」
真剣な顔のレイを見たら、嫌とは言えない。多分『あの人』に関わる事なんだろう。
「良いよレイ。刀を貸して……」
レイが差し出した刀の鞘を抜く。暗い外でもキラリと光る刃に、思わず吐息を漏らしてしまう。
「……これは、かなりヤバイよ……人斬り刀だ」
「ヤバイのは百も承知さ。でも、『この場』で調べて欲しいんだ。もし……万が一だけど、違っていたら返すから」
おれは頷き、刀の刃に触れた。途端に様々な場面が映画の様に脳裏に走る。この場合の映像は規則正しくなくて、時代も持ち主の顔や斬られた人がランダムに現れては消える。
しかし、何度確かめても『あの人』やレイの顔は出て来なかった――
「どう? 本物なの?」
不安そうな顔のレイに真実を告げるのは辛い。けど、言わなくてはならないんだ。
「レイ……」
口に出しては言えずに首を振った。レイも何も言わずに、ソッと溜め息をついただけだった。
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