怪盗☆Blackパンサー
呑気な奴ら
「今宵は月の無い晩だし、盗みには絶好だよね〜」
レイは呑気にそう言って長い髪をかき上げる。
ここは、獲物の置いてある純和風のドデかい屋敷……の屋根の上。
夜風に当たりながら如何にも気持ち良さげなレイにオレは言った。
「ねえ、警察に予告状なんてさ、アオル様な事して良いの? 」
レイもオレも黒い革の衣装に身を包み、一応仮面をつけている。 まるで妖しげなパーティのホストの様に……
「今回は予告しなければ、成功しない盗みなのさ」
意味不明な事を言って双眼鏡を覗き満足そうに微笑んだ。
「マコ、見てごらんよ。賑やかだよね〜」
見ると眼下の立派な門構えの前にはパトカーが数台待機してるし、私服刑事らしい奴らが組員に紛れて見張ってる。
「ね、女の刑事がいるよ。あれぇ? あの人はウチの客じゃない? 」
確かに見覚えがある……
前に、オルゴールがついたアクセサリーBOXを買っていった。
「そう、女だてらに警部様なんだよね、カッコいい〜」
何処までも呑気なレイにオレは溜め息をつき、無事に仕事が終われる様、胸元に下がるクルスを手に持ち神に祈った――
*―*―*
「警部、全て配置済みです」
楠木が報告しに側に来た。
私は丁度、山さんと打合せをしていたから、生返事をして楠木を追っ払う様に片手をひらひらと振った。
「ご苦労さん。んで、山さんはこっちに居て欲しいの、姐さんには手を出さないでよ」
「あの……警部? 」
楠木がおずおずと話しかけてくる。
ハッキリ言わない楠木に苛々して大声で怒鳴ると、豪快な笑い声が聞こえて来た。
「これはまた、豪気な警部さんだ……是非、家の息子の嫁に欲しいものだ」
《嫁》!? 聞き捨てならない台詞に楠木を押し退け、目の前にいる老人に畳み掛ける様に聞いた。
「嫁って、あなたの息子さんは歳はいくつ? 」
「今年、四十七になる……」
「ちょっと! 冗談じゃないわよ。私はまだ、二十代なのよ! そんなくたびれた叔父さん……」
「親分、例のブツはどうしましようか? 」
四十がらみのまるでヤクザ映画に出てくる様な渋い二枚目が後ろからズイッて現れた。
『うわっ、めちゃくそ好みだわあ〜』
「あああ、あの、あなたは? 」
「息子だが? 気に入らないなら仕方ない……」
「いえっ! そんな事ないですわ! ほほほ……」
楠木は嫌な予感で一杯だった――
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