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ホラ―小説
交差する糸

「また、苦情の電話ですよ〜一体どうしちゃったんですかね。それも《ミッドナイト・ステップ》だけ変な声が入ってるって……」

 静川君が受話器を握り、苦笑して話し掛けてきた。確かにこの所、苦情の電話が多い。

「詳しい事を聞いたの? それともまた、途中で切れたのかしら?」

 そうなのだ、詳しい話しを聞こうとすると、途中で通話が必ずといっても良いほど切れてしまい、どんな声だったかも把握出来てない。

「いいえ、また同じですよ。途中で切れてしまって……悪戯だと思ったりしたんですが、毎回違う人らしいんで。どうしましょう? 三枝主任……」

 私は溜め息をつき、局長に呼ばれるのを覚悟した。もしかしたら格下げされるかもと、暗い考えを振り払い、次の電話は私に回す様にと指示を出し、デスクの椅子に疲れきった体を預けた。

「主任、働き過ぎですよ。少し休んだらどうですか?」

 カップを置き、美奈ちゃんが心配そうに言ったが、今この状況では私の休暇など二の次だ。

「ありがとう美奈ちゃん。私は大丈夫よ。それより、美奈ちゃんこそ帰っても良いのよ。時間、大分過ぎてるじゃない」

「主任が大変な時に、のうのうと家になんか帰ってられません! と云っても珈琲を入れる位しか、出来ませんけど。私の憧れなんですから主任は」

 有り難くて、つい涙が出そうになる。女一人、45まで独身を貫いて仕事一筋に結婚もしなかった私だが、これで良かったんだと思えた。

「兎に角、情報が欲しいの。うちの番組だけ何故、苦情が来るのか。皆、協力して頂戴」

 皆一斉にはい! と返事する。本当に、良いスタッフばかりで、私は何としても原因を突き止めて、この《ミッドナイト・ステップ》を守らねばならないと心で堅く誓ったのだった。

「主任! また電話が!」

 直ぐさま、受話器を上げた私の耳に飛込んできた声は、今までの苦情とは違う会話で、私も一連の事件に巻き込まれる電話だったのだ――

『もしもし? 責任者に是非聞いて貰いたい話しがあるんですが。私……山村今日子といいます』



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