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お題小説
A

 ミリアは同じ境遇なのに、明るくておれにとっての、太陽みたいな存在だった。毎日実験ばかりの生活で精神的に追い詰められていたおれはミリアの優しさに救われていた。
「ショーゴ、辛い? 」

 ある日、ミリアが聞いてきた。初めて会ってから二年の月日が流れてた。おれは頷き、でも、笑い顔を作り言った。

「でも、ミリアが居るからボクは大丈夫だよ……」

 ミリアは嬉しそうに、笑った。だけど……その後の顔は、悲しそうに歪んだ。

「ショーゴ……私は行かなくちゃいけないの。仕事を……するんだって……」

 口に出した途端、ミリアの瞳から涙が溢れて白い床に染みを作る。おれはミリアに抱き付き、嫌だと首を振り声を張り上げて、泣いた。

「ショーゴ、あなたもその内仕事を命令されるわ。でも、その時がチャンスよ。『逃げて……』」

 それが……ミリアの最後の言葉だった。


***

「ショーゴ、君は明日から任務に付くことになる」

 十二歳になったおれに突然命じられた厳しい現実。でも、ミリアの言葉を思い出す。

『逃げて……』

 彼女はもう、居ない……
 あの日移動中の車からミリアは能力を使って逃げ出した。

 組織から、逃げ切れたのかは、おれには分からない……でも、どこか遠くに逃げている事を願っている自分と、また会いたいと思う気持ち、どちらも本当なのだ。

「分かりました……」


 感情を表に出さずに、返事をしておれは歩き出す。



 白い、何処までも白一色の世界から、出る為に・・・





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