お題小説
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何処を見渡しても白一色の部屋――そんな場所だった。おれが連れて来られた所は――
「ショーゴ君。これに何が入って居るか判るかね? 」
声を掛ける真っ白い人達。頭に取り付けた線は、脳波を取る機械に繋がっていて、始終頭痛を訴える、おれの意見など誰も聞いてくれずに……ただ質問ばかりを繰り返している。
「嫌だぁ、頭が痛いよぅ……」
涙を流しながら、拒否を繰り返すおれをなだめながら、答えを引き出そうとする。
「ショーゴ君、この質問に答えてくれたら外してあげるからね」
これ以上の実験は危険と判断した職員たちは、最後の質問と称し答えを待っている。
「うぁぁぁ、ネズミが……ネズミだよ、頭が……やめてよ……」
答えを言った途端、おれは痛みを耐えるのを止め意識を失った。
***
目が覚めても、真っ白い世界。何時まで続くのか――幼いおれには耐えられなかっただろう。
あの人に出会ってなければ――
「あなたがショーゴね? 私はミリアよ。よろしくね」
その人は、白い人間ばかりの世界で初めて色を感じた人だった。おれがまだ八つの時で、ミリアは十二歳、やはり手に余った親に、捨てられた子供だった。
捨てたのでは無いと親は云うだろう。確かに、道端とかに置いて行った訳じゃない。でも、おれ達は間違いなく捨てられた子供。
スカウトと偽る、組織の連中におれを渡したのだから……
***
「お子さんを私達に預けてみませんか? 」
超能力研究所≪アース≫から来たと名乗った男は白衣に身を包み名刺を父に差し出した。
「私達に預けて頂ければ、ご子息の能力を必ず抑えてみせます」
父は黙ってそれを受取りおれを見て頷いた。
「だ、旦那様。いけません!ショーゴ坊ちやまを手放すなど……」
執事の佐伯が必死に止めても父の決意は堅く、おれは連れて行かれた。
――あの、白一色の世界へ――
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