お題小説
人魚のセイヤ君
オレ達は生まれた時から一緒だ……だから奴の様子が変だと直ぐに気が付いて婆ちゃんに言ったんだ。それが、こんな事になるとは・・・
「セイヤ、 頼みがあるんだがね?」
普段だったらありえない猫撫で声で話しかけて来た婆ちゃんに疑いの眼差しで答える。
「何だよ婆ちゃん。オレ嫌だからな! 何か企んでる目をしてるし…… 」
一気に喋って、婆ちゃんの出方を見る。すると不気味な気配を漂わせ言った。
「他でもない坊ちゃまの事なんだよ! お前達は兄弟同然に育ったのに心配じゃないのかい? ああ、なんて婆不幸に育ったんだ! 私はそんな子を生んだ覚えはないよ!……」
いゃ、生んだのはアンタじゃないし! 心の中で軽くツッコンでおいてから溜め息を付き、言ったんだ。
「分かった、話しを聞くから言ってみて」
そしたら、リオンの事で……実の孫よりも王子様の方が大切なんだ。ウチの婆ちゃんは……
「とにかく、魔法使いの処にお供すれば良いのか? 」
「そうだよ。どんな輩かも知れないからね。坊ちゃまの事を守るんだよ」
そういう事情も知らないで、おもいっきり嫌な顔をするんだからな奴は。全くコレだから温室育ちの坊ちゃまは困るよ。
魔法使いは魔法使いでオレを目の仇にするし、やってられね〜よホント。
そんなこんなで遂に人間界へと行く事になって。
そりゃあ、リオンは良いよ。好きな子に逢いに行くんだから。
オレは人間なんかになりたくも無いのに、お付き合いで変な薬まで飲ませられて魔法使いに馬鹿にされた・・・
「幾ら鈍い君でも、何かしら変化がある筈ですよ」なんて、ムカ〜〜
でも、人間になって1つだけ良かった事がある。
海が……オレ達の住む、この海がこんなに綺麗なブルーだったって事・・・
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