アサシンの夜明け
愚者の末裔
「死んだ筈だと言いたそうだな……」
ヤツがおかしそうに、だけども目は蛇の様に冷たく、口許だけ笑いながらそう言った。
「アンタ生きてたんだ。運が良かったね」
何故だ? その言葉がオレの頭の中をグルグル回る。あの時、確かに止めを刺した筈なのに……
「あそこのボスと取引きしたんだよ。レイジ、お前と俺の命とをな。それほど欲しかったらしい、綺麗な性奴隷が……」
怒りが沸き上がる。性奴隷だって? オレは……
「なんでだ? オレがお前に何をしたんだ! 最初に組んだ時から敵意剥き出しにしてさ!」
キールはオレに近付き、襟首を掴むと吐き出す様に言った。
「何でだって? お前が来てからボスは俺に興味を失って抱いてもくれなくなった。お前のせいで……俺は捨てられたんだ!」
オレはキールの理由を聞いて笑いだした。おかしくて、哀しくて仕方ない。
オレが嫌で嫌で、仕方ない仕事をコイツは喜んでしていたというのか?
笑われた事で馬鹿にされたと思ったのか、キールの冷徹な顔が怒りに赤く染まった。
「何が、おかしい?! お前のその態度が俺を、逆撫でするんだよ!」
オレは、キールを睨み言った。そんなに、憎らしいのなら何故、殺さないのかと。
「良いよ、サシで殺り合おうよ。それとも、自信が無いの?」
挑発したけど、ヤツは乗って来なかった。もちろんサシで勝負しても負けるから。
「何で今更、俺がお前なんかと殺らなきゃならない?今じゃ、幹部でお前の上司である俺が」
「どうでも良いけど、いい加減にミーティングをしてくれない? 無駄な時間を過ごしたくない」
ずっと黙って聞いていたショーゴが、そう言ってオレを止めた。コイツは時に頼りになると、この時に確信した。確かに今、ココで殺り合う訳にはいかない。
「分かった……私情を挟んで悪かった。それでは、ミッションについてのミーティングをする」
この時、ヤツが巡らした罠にオレ達の運命が変わるとは、ショーゴもオレも予感すら出来なかった――
まるで、クモの糸に絡め捕られるように、オレ達は囚われて逝くとは。
籠に囚われた鳥たちは
いつかは外に出れるのか
それとも……
亡骸になる定めなのか
分かるのは
運命の輪を回すものだけ
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