アサシンの夜明け
レイジA
食事をしてる間、ゼンが頬杖をついてオレの顔を見ている。
「なに? ゼン、なんか言いたそうだね」
「いや、綺麗だなと思って……」
恥ずかしげもなくそんなセリフを吐くゼンの足をテーブルの下で蹴り「当たり前だ」と言ってやる。
「レイ、今晩空いてるか?」
「ゼン、今夜は駄目だ。判るだろう?」
「そうか、今日はボスの所に行く日か……」
「行かせたくねえな」
ゼンは俯いてボソッと言った。
だって、ゼン……仕方無いじゃないか。
ここに拉致同然に連れて来られた時から、ボスの玩具なんだから……アイツとオレは。
そう、あれは九年前のあの日だ。
オレはまだ六歳だったのに……
◆◇◆◇
「お前たちに選ばせてやる……」
突然現れた黒ずくめの集団。
両親はオレ達をかばい、固まって震えていた。
「何でも云う事を聞きますから、子供達は助けて下さい!」
父が必死で頼んだ言葉に――
「どっちを取るのか、お前たちに選ばせてやる」
とリーダーらしき男が言った。
「どっちとは……?」
何の事だか分からず、父と母は困惑した顔をしてる。
男が苛々しながら話すには、オレか双子の兄かどちらかを選べと云う事らしい。
その要求が分かった時……両親の顔が苦痛に歪んだ。
「どっちを取るかなんて選べる訳ないじゃ無いか!」
母はオレたちを離すものかと、一層強く抱き締めた。
「それなら俺たちは、お前らを殺して二人とも連れて行くまでだ」
「!?……」
苦渋の決断だったに違いない。
でも……あの時、父が。オレを真っ直ぐ見つめたから――
「コイツか……」
母を突き飛ばし、オレを抱えあげて家から出てく……
母が裸足のまま、玄関に出てオレの名を呼ぶ。
『レイジ――!』
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