アサシンの夜明け 復讐F もしも、生きて還れたら・・・ アイツに伝えたい。差し出された優しい手を撥ねのけ、自分の気持ちを偽った罪を……愚か者の真実を・・・ *** 早く……速く走らなくては。タイムリミットが迫っていた。 このままでは、バラバラ死体で発見されるだろう。それだけは、死んでも嫌だ。 きっとアイツはオレだとは認めはしないだろう。そして、何時までも姿を求めさ迷い歩くのだ。 走り抜けた後から爆音が響く。いよいよ始まった。生還か、死か、生存のためのラストゲームが―― 吹き飛ばされなかった運のいい奴らが、部屋から慌てふためいて出て来た。そして、オレを認めると向かってきた。 「テメェか! こんな事しゃがって! 死ね! 」 大概の組員が逃げる中、命知らずの奴らがオレに銃を向ける。 オレは乾いた笑い声を上げて、両手に持った拳銃で何の迷いもなく撃つ。極限状態の中、既にオレは気が狂ってるのかも知れない―― ――あと二分――それで全てが終わる。生きているか、それとも…… 今、この時ほど能力が欲しいと思ったことはない。云う事を利かない足が呪わしい。 それでも、ゴールが近付き、建物の出口が見えてきた。人の気配すら最早無い。 心の中で、オレは叫ぶ。助かった! 生きてアイツに逢える! 歓喜の声を上げようとした時に一瞬で冷たい水を被せられた気がした。奴の声が…… 「レイジ、何処へ往く気だ? 」 信じられない! なんで生きている?! 確かに殺した筈だ…… 奴は胸を開け防弾チョッキを見せ、オレに狙いを付け言った。 『残念だ……気に入ってたんだが死んでもらうしかないな』 オレは静かに瞳を閉じアイツの顔を思い浮かべる。 ――ゼン……ゴメン……もう、ダメみたいだ…… アンタを置いて逝くオレを…… どうか……赦して…… [前頁][次頁] [戻る] |