アサシンの夜明け
夢E
暗く湿った地下室を一人降りて行く――もう、これしか無いんだ……でないと永遠に手に入らない。命よりも大事な人――
錆び付いたドアを開け、薬品の並んだ棚を眺めながら奥の研究室へと足を踏み入れる――
「やあ、待っていたよ・・・」
声を掛け椅子から立ち上がったその人は……得体の知れない笑いを顔に張り付け、肩に手を置き確認する様に一言云った。
「構わないんだね? 元には戻れ無いよ。どんな姿になるのかも……せっかくの君の……」
「良いんだ……分かってるから、早く手術してよ」
冷たい手術用の台の上に横になり腕に挿し込まれたチューブを通り奇妙な色の液体が体内に流れ込んで来るのを人事の様に見ている自分がいる。段々と意識が遠くなって――
*****
浅い眠りに落ちていたオレは、微かな物音を聞き付けただけでも目が覚めた。隣に寝てる筈のゼンに手を伸ばし揺り起こす。
「ゼン……起きてよ」
ゼンは薄く目を開けてオレを引き寄せキスをした。
「レイ……どうした? まだ足りないのか? 」
良く見ると、窓が少し開いていて風でカーテンが揺れている……ゼンも異変に気付き、眉間に皺を寄せた。
「さっき閉めた筈だ……」
立ち上がり窓を閉めに行こうとして、違和感を感じて立ち止まる……
「ゼン……何かがここに居る!」
言った途端に、何者かがオレを抱えて窓から身を躍らせた。
「レイ! 」ゼンが叫ぶ声を聞きながら銃を探すが全裸で寝てた為に凶器になるような物は無い。
オレの部屋は七階にあって、このまま下まで落ちたら確実に死ぬだろうが、生憎素直に死ぬつもりはない。兎に角コイツを何とかしないと――
その瞬間……いきなり景色が目まぐるしく回り始めた。
この感覚……テレポートか? それが出来る奴をオレは一人しか知らない。
「……ルイ……?なの」
相手は答えず、でもピクリと反応したから幾分安心して身を委ねた。(ルイが危害をオレに加える訳がない)
それが――幻想とも知らずに――
きみの声――
きみの姿――
すべて、欲しいよ――
おれの――
命よりも大事な人――
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