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アサシンの夜明け
夢B

「何で、俺を避ける? 」

 ゼンが此処に来て二ヶ月程経った、ある日――

 任務をシュミレーションして訓練する為のミーティングの時に腕を掴まれて言われた。

『何故、ゼンを避けて居るか、云える訳など……』

「は……放して……」

 掴まれた腕から、力が抜けて来て立って居るのがやっとで。
 訳もなく涙が溢れてきて目の前のゼンの姿がぼやけて映った。
 突然、涙を浮かべたオレの腕を引き、抱き締めるゼン――

「悪かった……」

 頭を優しく撫でながら囁くゼンの腕から逃げ出す臆病なオレ。



「レイジ〜〜待ってよ」

 心配してルイが後を追い掛けて来る。
 走る足を緩めルイが来るのを待って居ると、飛び付いて来たルイが泣きそうな顔をしてる。

「アイツ、レイを泣かした! 」

 泣き笑いならぬ、泣きながら怒って居るルイに、何でも無いと良い聞かせた。

 能力者であるルイを怒らすと、この建物から一歩でも出たら、殺されてしまう――

「本当に、何も無いんだよ。ただ、居なくなってしまった人に似てるだけ」
「その人って、レイジの大事だった人なの? 」

 ルイが涙を流しながら、聞いて来る。オレは、何とか笑おうとしたのだけど、とても出来そうに無い。
「だ…大丈夫………だよ」

「レイジ……泣かないで……お願いだよ……」

 二人抱き合って幼子の様に泣くことしか出来なかった。





*****

 あれ以来ルイは、片時も離れなくなった。オレを守って居るつもりらしい。

「レイジ……何でアイツを見てるの? 」

 気が付けばゼンを目で追ってしまう……昔と変わらない琥珀色の髪と優しい瞳。凛とした男らしい顔立ち……触りたくて……触れて欲しくて……

 振り切る様にルイに笑い掛けて、ミーティングルームに向かう。次の、任務を聞きに行くために。






もう、壊してしまいそうだよ……



自分で架けたハードルは……



余りにも高くて………




跳び越えられそうにない……





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あきゅろす。
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