アサシンの夜明け
夢@
――三年前――
「レイジ! 待って〜」
後ろから騒がしい声が聴こえてきて瞬間、ベアハッグを掛けて来た奴を、一睨みしてオレは蹴りを入れた。
「イテッ! レイジ〜ぃ」
棄てられた子犬みたいな目でオレを見つめるルイは、クリクリの金髪で深緑の瞳。
オレと同じ歳の十二歳なのに、まだ幼い。
「ルイが、いきなり技を掛けて来るからだろう?」
この困った相棒を、からかう為にワザと冷たく返事をする。
みるみる内に涙が盛り上がる瞳をペロリと舐めフフンと笑うオレ。
「レイジ〜怒って無いの?」
コイツを何時までも怒っていられる奴が居たら、是非お目にかかりたい。
「怒ってないよ」
頭を撫でてギュッと抱くとルイも抱き返して来た。
「何時も一緒に居たいよ。レイジ……」
抱きついたまま呟くルイが可愛くて益々力が入る。
「ぐ、苦しい……」
その声が尻尾を踏まれた猫の様で、笑いが込み上げ、肩が震える。
「ご、ゴ、メン……」
お腹を抱えて笑い出したオレに、ほっぺを膨らましたルイは次の瞬間、腕の中から居なくなった。
「ルイ……?」
能力を使い何処かに行ってしまった。
急に詰まらなくなったオレは訓練場へと行く事にした。
専用のヘッドフォンを着け銃を構え、的に向かって撃ち込む。
弾切れになるまで撃ち込んだ後の人型の的は、全て額を撃ち抜いた跡があった。
気が付けば、周りの人間は自分の訓練そっちのけでオレに拍手喝采を浴びせていた。
「スゲエなぁ〜レイジは!」
取り巻きの一人のミキが興奮して話し掛けてくる。 気が付けば、オレの後をゾロゾロと幾人も付いて歩いて来ていた。
「おっ、新入りかあ?」
ミキの声に顔を上げ、オレの目に飛込んで来たヤツは……
「レイ……」
呟いた、男の顔は想像した通りのアイツの姿。
ゼン……来てくれたの? オレを迎えに?
声を出そうとしたのに、喉の奥で引っ付いて出て来てくれない。
昔と変わらない、真っ直ぐな瞳。
なのに……オレは、オレは、色と欲にまみれ血塗られたこの身体。
天へ召される筈の無い、オレはゼンの側にふさわしくない。
気が付かなかった。
アイツなんかオレは知らない――
通りを擦れ違う時、周りの奴らに合わせ笑い声を殊更立てた。
身体がギシギシ傷み、心が悲鳴を上げても――
どんなに待ち望んだ年月が無に帰しても。
愛してる。
ただ、それだけで――
オレは、オレは。
生きて逝けるから――
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