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アサシンの夜明け
籠の中の哀しい鳥E

 別れの日は、男の子の気持ちと同じで、朝から雨がしとしと降っていた。

「坊主……あの子の事を思うなら、安心させてあげなけりゃな」

 男の子は目に涙を溜め、父親に頷く。浜には、出港の準備で大わらわで、村じゅうの人たちが見送りに来ていた。レイが……村のおばさんに連れられて男の子の方へ歩いてくる。

「元気で居るんだよ……」

 おばさんはレイをいとおしげに撫で、溢れそうになる涙をエプロンで拭いている。男の子はレイに向かって、にっこり笑い、話し掛ける――

「レイ、きようは、そとにおでかけするんだよ……」

 レイは男の子に「おでかけ? いっしよに? 」と言って顔を上げ嬉しそうに笑う。

「いっしよには、いけないんだ……だけど、かならず、かならず……レイにあいにいくからね」

 レイは、首を振りイャイャと顔をくしゃくしゃにして泣き出した。男の子が一緒じゃないと嫌だと言って泣いた……


 やがて……レイを乗せた船は、静かに海に向かい進み出す。男の子の耳には、レイの泣き叫ぶ声が聴こえ、堪らず走りだし名前を呼ぶ。

「レイ! レイ! いかないで!」
 父親は、男の子を捕まえて力強く抱き締めた。



レイ……なかないで、大きくなったら、かならず、かならず、むかえにいくから……






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